口腔ケアの必要性
口腔ケアを怠ると虫歯や歯周病のリスクが高まります。悪化させてしまうと大切な歯を失うことにつながり、歯を失うと咀嚼や発音、見た目などさまざまな影響を与えます。咬み合わせのバランスもくずれやすく、顎関節に負担がかかり、さらには全身のバランスにも悪影響をもたらすのです。
お口の中で虫歯や歯周病を引き起こす細菌が増えてしまうと、食べものが誤って気道に入ってしまう誤嚥(ごえん)を起こした際、気管や肺の炎症を起こす誤嚥性肺炎になるリスクが高まります。高齢者の場合、睡眠中など気づかない間に唾液を誤嚥するおそれがあり、抵抗力が弱いと重篤な事態を起こしかねない肺炎を発症してしまうこともあるのです。
また歯周病が悪化すると血管循環にも悪影響を与え、糖尿病や心疾患を引き起こすリスクが高まります。ほかにも、妊婦の方は早産や低体重児出産のリスクもあるため、お口まわりの健康維持だけでなく全身の健康のためにも口腔ケアは欠かせません。
口腔ケアの効果
口腔ケアの意義
食べるための大切な役割を果たします
食べものを咬んで細かく砕き、唾液と混ぜて飲み込む咀嚼から嚥下までの一連の工程は、消化の第一段階です。栄養補給のために大切なうえ、「食べる」ことは喜びにもつながります。また、お口の中に異物が混入したときなど、反射的に吐き出して飲み込むのを防ぎます。
骨や筋肉のバランスを整えます
お口まわりが健康だと、食べ物をしっかりと咬めます。咬み合わせのバランスが整っていると全身のバランスも整いやすくなります。反対に、咬み合わせのバランスが悪いと、歯並びが乱れたり、虫歯や歯周病にかかりやすくなったりします。また、お口まわりの筋肉が過度に緊張して、首こりや肩こり、頭痛、腰痛を引き起こすこともあるのです。
脳の発育を促し、老化を防止します
しっかり咬むことで、脳への血流量が増え、脳の老化を防ぐのに役立ちます。しかし、歯がなくなると咀嚼がうまくいかなくなり、発音も不明瞭になりがちです。さらに食べることへの意欲が減ると脳への刺激が減り、脳の老化につながることがあります。
運動能力を高めます
力を発揮するときにグッと咬みしめることからわかるように、咬み合わせのバランスが整っていると全身の筋肉に好影響をもたらし、運動機能が高まります。身体の平衡感覚にも影響を与えます。
口腔ケアの効果
口腔ケアは、お口のトラブルの予防につながります。虫歯や歯周病をはじめ、カンジダ性口内炎などの口腔感染症のリスクを抑え、お口まわりだけではなく誤嚥性肺炎のリスクも軽減します。
また、咀嚼や嚥下をうまくできるようになるので、口腔機能の低下を防ぐことにもつながります。口から食べものを食べ、飲みものを飲めるので、低栄養や脱水を防ぎ、すみやかな体力回復が可能です。さらに、しっかり発音できるので会話がはずみ、コミュニケーションを楽しむことができます。
口腔内科
口腔内科とは、お口の中のさまざまな症状に対して外科処置をせずに治療する、欧米では一般的な診療科です。日本においてこれまで口腔外科や耳鼻科が担当していたような、口の中全体の痛みやヒリヒリ感、口が渇くドライマウスや舌のピリつき、口の中が白くなるなど、それらに対する治療を行います。
歯が痛い場合、まずは虫歯や歯周病、知覚過敏が疑われます。しかし考えられる原因はそれだけではありません。三叉神経の炎症やお口まわりの筋肉の緊張によっても「歯が痛くなる」ことがあり、複数の原因がからんでいることもあります。
口腔顔面痛
お口まわりの痛みのことを口腔顔面痛といいます。歯や歯ぐきなどのお口の中だけでなく、頬や顎、目のまわりや頭痛も含みます。当院は口腔顔面痛認定医が所属し、痛みの軽減治療に取り組んでいます。口腔顔面痛を治療するためには、まずその原因を突き止めなければなりません。そして痛みの要因を取り除くための内科的、理学的治療を行います。原因によっては脳神経外科や耳鼻科、頭痛専門医をご紹介します。
口腔顔面痛の原因
- 口腔内にトラブルがある
- 顎関節やお口まわりの筋肉に問題がある
- 目・鼻・耳などにトラブルがある
- 三叉神経などの神経性の病気がある
- 脳内の神経血管性のトラブルがある
- 心因性の要因がある など
口腔乾燥症
口腔乾燥症とはドライマウスのことです。口の中や喉が渇き、ネバネバして口臭がきつくなります。そして、プラークや舌苔、虫歯が増え、悪化すると強い口臭がしたり舌表面がひび割れたりすることがあるのです。舌の表面がひび割れて「舌痛症」になると、食事が摂れなくなり、場合によっては不眠を起こします。さらに自己免疫に異常が出るなど、全身にさまざまなトラブルを引き起こすリスクがあるのです。
当院はドライマウス研究会認定医です。現在、ドライマウス人口は800万人ともいわれていて、眼が乾燥する「ドライアイ」とともに注目され始めています。
ドライマウスの原因
1:食生活
すぐに飲み込めるような食事ばかり摂っていると、唾液の分泌量が少なくなり、ドライマウスを引き起こす可能性があります
2:ストレス
緊張したりストレスがかかったりすると交感神経が刺激され、唾液の分泌量が抑制されます
3:薬
鎮痛剤や抗うつ剤、抗パーキンソン剤や降圧剤などのさまざまな薬剤の副作用に唾液分泌の低下が含まれます
4:加齢
年齢を重ねると口や顎の筋力が低下し、唾液分泌量も低下します。70歳以上の男性は16%、女性は25%の唾液量が低下するといわれています
5:口呼吸
鼻で呼吸するのではなく、口呼吸をすると口の中が乾燥してしまいます
6:そのほかの病気
脱水症、糖尿病、浮腫、シェーグレン症候群、骨髄移植などさまざまな病気が考えられます
ドライマウスの治療法(ドライマウス研究会認定医)
口の中の粘膜保護のために保湿力の高い洗口液や保湿ジェル、スプレーの噴射を行います。また夜間のお口の中の乾燥を防ぐために、保湿用マウスピース(モイスチャートレー)や夜間義歯などを装着していただきます。ガム療法や味覚刺激法、唾液腺マッサージなども含めた生活指導や対処療法が治療の中心です。